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職務質問はどのような人をターゲットにして行っているのでしょうか?

「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」が対象となります。
異常な挙動としては、人目につかない場所に潜む、血痕の付いた服を着ている、同じ場所を何度も往復して屋内をのぞく、警察官の姿を見て急に反転する、こん棒を携行している等がこれに当たりますが、ある挙動が異常であるか否かは、場所や時間帯によっても異なり得ます。
例えば、同じ金属バッドを持っているにしても、晴れた日曜日に公園でユニフォームを着て持っているのであれば異常とは言えませんが、深夜酔っぱらった状態で持っているというのであれば異常な挙動であると判断されてもやむを得ないでしょう。

自転車に乗っていると警察官から職務質問をよく受けます。断れないのでしょうか。

職務質問とは、犯罪の予防・早期発見のため、警察官が挙動不審者などを停止させて行う質問をいいます。根拠は警察官職務執行法2条1項です。
職務質問では、①停止、②質問、③任意同行を求めることができます。しかし、あくまでも任意であるのでこれを断ることはできます。
職務質問はこのように任意ですから、結論から言うと断ることはできます。しかし、断ってもしつこく身分証明書の提示を求めたり、停止を要求したりしてきますので、任意であるとの一本調子で断り続けるには大変な気力が必要です。犯罪に巻き込まれずに生活できているのは警察官のおかげなのですから、やましいことがなければ職務質問を断るなどと考えずに市民の義務として協力することが望ましいでしょう。職務質問をする警察官の態度が居丈高なので協力する気がなくなったという人もいるでしょう。協力するのが当然という態度で、いきなり犯罪者扱いする警察官も中にはいると聞いています。警察官に対する不信感が高まれば、都市型犯罪などで市民からの情報協力が得られなくなり、刑事事件解決も困難になります。警察官も職務質問を受ける市民も、お互い協力して治安を維持しているという意識が必要なのではないでしょうか。

覚せい剤を使用しているのではないかと尿を出すように警察官に説得され、無理やり警察署にとどめおかれ、尿を提出させられました。前科があるので覚せい剤の使用を疑われたようですが、このような任意同行は認められるのでしょうか?

事案毎の判断が必要です。実務では、覚せい剤を使用した直後の被疑者が抵抗する事例などで、任意同行に対する説得の許容範囲が問題になります。職務質問で覚せい剤所持の前科があることが分かると、任意同行を求められる傾向はあります。これに対して抵抗すると、ほかの警察官にも応援を求め、現場が騒然となります。任意同行に対する説得の許容限度に関する判例として、対象者の身体に対する捜索差押許可状の執行が開始されるまでの間に、警察官が約6時間半以上も対象者を現場に留め置いた措置について、任意同行を求めるための説得行為としては限度を超えていて、移動の自由を長時間にわたり奪った点において、任意捜査として許容される範囲を超えていると判断されています。

職務質問を断って現場を立ち去ろうとしたところ、肩に手をかけられました。これは違法なのではないですか。

職務質問の根拠となる警察官職務執行法2条によると、警察官は、不審者を「停止させて」質問することができます。しかし、令状なくして実施される職務質問は、捜査に関する任意処分の原則(197条1項)から、停止させる手段としては、原則として任意の手段による必要があります。
しかし、一切の有形力の行使が許されないとすれば職務質問の実効性が失われますし、また、職務質問は犯罪の捜査に向けた活動ではなく、行政警察活動であることから、秩序維持という目的のためにはある程度の有形力の行使の必要性が認められます。
そこで、身柄拘束などの強制に到らない程度の有形力の行使は、必要最小限度なものであれば例外的に許容されるとされています。
例えば、肩に手をかけられた程度であれば相当な手段であるとして違法にはなりません。

【適法とされた事案】
巡査が職務質問中、駐在所から突然逃げ出した者を130メートル追跡し、引きとめるため背後から腕に手をかけて停止させた行為(最決昭29.7.15)
警察官に対して暴行を加え傷害を負わせた者が路上の集団に紛れ込んだため、警察官がその集団に対し停止を求め、集団の一員たる者が立ち去ろうとしたので、背後から肩に手をかけた行為(最決昭59.2.13)
交通事故後の現場整理をしていた警察官が、つばを故意に吐きかけられたと認識し、相手方の胸元をつかんで歩道上に押し上げた行為(最決平元.9.26)

職務質問を断って現場を立ち去ろうとしたところ、警察官が「止まらなければ逮捕する」 「逃げると撃つぞ」と威嚇しながら追尾した場合、違法ではないのですか。

心理的な強制を加えて停止させようとするものであって、警察官の職務行為としては著しくその範囲を逸脱しており違法です。

車に乗って職務質問から逃れようとエンジンをかけましたが、警察官が窓から手を入れてエンジンキーを回転させてスイッチを切りました。自分の車のキーで許可もしていないのに、このようなことをされて不満です。職務質問は任意のはずなのにここまでされるのは違法ではないのですか。

職務質問に伴う有形力の行使は強制に到らない程度の必要最小限度なものであれば許容されます。特に、飲酒が疑われるような場合であれば、道路交通法上の違反行為にも該当しますし、運転を継続させれば運転者自身にも危険が及ぶのでその保護の必要性からもある程度の有形力の行使が認められます。そして、自動車の特性から、走って逃げる場合とは異なり、発進すると即時に遠くまでの移動が可能であって、それを阻止するためにエンジンキーを回すことも、さらにエンジンキーを抜き取る行為も適法とされる場合が多いです。

【適法とされた事案】
酒気帯び運転の嫌疑濃厚な被疑者が、車を発車しようとしたため、車内に手を入れてエンジンを切った事案(最決昭53.9.22)
覚せい剤使用の疑いがあり、異常な言動があったため、自動車を発車させないようにエンジンキーを抜き取った事案(最決平6.9.16)

宿泊中のホテルの部屋にいたところ、覚せい剤所持の容疑で警察官が部屋に入って職務質問をしようとしたので、部屋のドアを閉めようとしました。警察官がドアの隙間に足を入れてドアを閉めないようにしました。これは違法なのではないでしょうか。

職務質問を行うにあたり、ホテルの宿泊客の意思に反して部屋の内部に立ち入ることは原則として許されません。しかし、無銭宿泊や覚せい剤所持等が疑わしい状況で、質問を継続し続ける必要がある場合に、その状況を確保するため、内ドアを押し開け、内玄関と客室の境の敷居上当たりに足を踏み入れ、内ドアが閉められるのを防止したことは、適法であるとされています(最決平15.5.26)。
判例では、ホテルの部屋に入った警察官が、約30分間にわたり、全裸の被告人をソファーに座らせて押さえ続け、その間に衣服を着用させる措置を取らなかった事案について違法とされています。

≪参考≫
警察官職務執行法
第2条(質問)
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。

所持品検査

所持品検査はどういう法律上の根拠で認められるのですか?

刑事事件における所持品検査は明文で根拠があるわけではないですが、警察官職務執行法2条1項で「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」と規定する職務質問に付随する処分として認められています。

所持品検査はどの範囲で認められますか?

任意手段である職務質問の付随行為として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度で行うのが原則です。しかし、承諾のない限り一切許容されないとするのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、認められるとされています。
具体的には、所持品検査の必要性・緊急性を考慮し、所持品検査によって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益とを比べて相当な限度内において認められます。

【適法とされた事案】
銀行強盗という重大な犯罪の容疑が濃厚な被疑者であり、凶器所持の疑いもある者が、再三の職務質問に黙秘し、バッグの開披要求を拒否し続けていたことから、鍵のかかっていないバッグのチャックを開披し内部を一瞥した事案(最判昭53.6.20)
覚せい剤事犯の嫌疑が飛躍的に高まっており、明確な拒否の意思表示もなかった状況で、「床に落ちていたのを拾ってテーブルの上に置いた財布について、2つ折りの部分を開いた上ファスナーの開いていた小銭入れの部分からビニール袋入りの白色結晶を発見して抜き出した行為(最決平15.5.26)

【違法とされた事案】
警察官が覚せい剤の使用等の疑いのある被疑者に対して、被疑者の上着内ポケットに手を差し入れて覚せい剤、注射器を取り出した事案(最判昭53.9.7)
警察官が、覚せい剤使用の嫌疑に基づき、被疑者の承諾を得ずに、自動車のシートを前後に動かして検索する行為(最決平7.5.30)
足首付近の靴下の膨らんだ部分から覚せい剤様のものを取り出す行為(最決昭63.9.16)

自動車検問

自動車検問にはどのような種類がありますか?

自動車検問とは、犯罪の予防・検挙のため、警察官が進行中の自動車を停止させ、必要な事項を質問することを言います。これには3種類あります。
①交通検問:交通違反の予防・検挙を目的とするもの
②警戒検問:犯罪一般の予防・検挙を目的とするもの
③緊急配備検問:特定の犯罪の捜査を目的とするもの