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略取・誘拐Q&A

刑事事件における「略取」と「誘拐」はどのように異なるのですか?

刑事事件における「略取」とは、暴行・脅迫等の強制的手段を用いるなど人の意思を抑圧して行う場合です。
刑事事件における「誘拐」とは、欺罔・誘惑を手段とするなど人に誤った判断をさせて行う場合です。

【略取の例】
事態に適切に対応する能力の未熟な子どもの場合、その子の携帯品を手中に入れ「これを返して欲しければついて来い」などと言った場合。
コンテナ内に入っている者を外部から施錠して閉じ込め、コンテナごとトラックに乗せて運び去った場合。
麻酔薬を用いて意識を失わせて連れ去る場合。
嬰児やこん睡状態にある者を連れ去るというように、被拐取者の心神喪失・抗拒不能に乗じた場合。

【誘拐の例】
甘言をもって相手方の判断を誤らせる場合。
相手方を心神耗弱に陥れて、あるいは相手方の知慮浅薄・心神耗弱に乗じて、被拐取者を事実的支配下に置いた場合には偽計・誘惑を手段としていなくても誘拐です。
泥酔して適正な判断ができない者を甘言すら用いずに誘導して自動車に乗せて連れ去った場合も誘拐です。

被拐取者(略取・誘拐する対象の相手、被害者)が未成年の場合、その者の同意を得ていれば刑事事件における略取・誘拐罪は成立しませんか?

成立します。
略取及び誘拐の罪(とくに未成年者拐取罪)の保護法益(法が守ろうとしている利益)は、
第1に被拐取者の自由、第2に親権者等の監護権です。
したがって、被拐取者の同意を得た場合でも、監護権者の同意を得なれば刑事事件における未成年者拐取罪が成立します。

母親の監護養育下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が連れ去った場合、父親に拐取罪が成立しますか?実の父親が子供を連れて行ったことは刑事事件における罪にならないのではないでしょうか?

質問と同様の刑事事件の事例について、判例は拐取罪が成立するとしています(最決平17.12.6)。

被害者がかわいい子供であったため、ただしばらくの間だけ連れて歩きたかったという場合に、刑事事件において本罪は成立しますか?

成立します。
略取・誘拐罪は、犯行の動機や目的を問わず成立します。

実の親から虐待されているのを見かねて、その子供(未成年)を保護育成するために誘拐した場合に、刑事事件において本罪は成立しますか?

成立します。
本罪は、犯行の動機や目的を問わない犯罪ですので、不法目的である必要はありません。たとえ、被害者を虐待から救い保護育成する目的であったとしても犯罪は成立します。

犯罪が成立するためには故意が必要です。
本罪の故意は、「拐取する」という故意だけでなく、その拐取の対象者が「未成年である」ことの認識、少なくとも未必の認識が必要です。

未成年者を成年者と勘違いして略取・誘拐した場合に、刑事事件において本罪は成立しますか?

故意がなければ成立しません。
ただし、未成年者であることの認識は未必の認識でよいので、誰がみても小学生であるような子供を成年者だと勘違いしていたといっても通用しません。

成年者を未成年者と勘違いして略取・誘拐した場合に、刑事事件において本罪は成立しますか?

被拐取者が成年者であれば本罪は成立しません。刑事事件における成年者拐取については、225条から226条に規定される目的がなければ、拐取罪の対象にならないので、単に略取・誘拐しただけでは拐取罪は成立しません。

未成年者を誘惑して自動車に乗せましたが、途中立ち寄ったドライブインで逃げられました。この場合は、刑事事件において既遂ですか、未遂ですか?

被拐取者に対する自己又は第三者の実力支配が設定されれば本罪は既遂となります。
質問の場合、自動車に乗せた時点でひとたび自己の実力支配下に置いたと法律上評価できる以上、その後目的地に着く前に逃げられたとしても未成年者拐取罪は既遂になります。

営利目的等略取及び誘拐(225条)

営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、未成年者を拐取した場合には、刑事事件における未成年者拐取罪が成立しますか?営利目的等拐取罪が成立しますか?

営利目的等拐取罪のみが成立し、未成年者拐取罪は成立しません。

被拐取者である女性を芸妓にあっせんしてその雇い主からあっせん報酬をもらうという営利目的で誘拐した後、あっせんする前に途中立ち寄った旅館に宿泊中逮捕されました。未だ目的を達成できていませんが、刑事事件において既遂でしょうか、未遂でしょうか?

既遂罪が成立します。
営利目的等略取及び誘拐罪の既遂は、自己又は第三者の実力支配下に置くことを持って完成し、営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的が達成されたか否かは関係ありません。
質問の他にも、わいせつ目的で14歳の被害者を自己の自転車に乗せ、約13町ほど連れ去ったところを被害者の母親に発見されて被害者を奪還された事例(東京高判昭30.3.26)の場合にも既遂罪とされました。

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